賃貸物件から退去する際に起きやすいトラブルが原状回復の費用負担に関するものですが、
その中でもクロス張り替えの工事費用を貸主と借主がそれぞれどの程度負担するのかはよく問題となっています。
基本的には、常識的な範囲内で部屋を使用し続けていれば借主側が負担を求められることはありませんが、
ケースによっては借主側が工事費用の一部を負担しなければならなくなることがあります。
国土交通省が作成した原状回復をめぐるトラブルに関するガイドラインでは、
経年劣化によって生じた部分については貸主の負担、過失や故意によるものについては借主の負担が基本と定められています。
例えば、クロスが変色した場合は、それが日光に晒されるなどといった自然現象で起こったものであれば貸主側の負担となり、
タバコのヤニなど注意していれば避けられるような行為が原因で起こったものなら借主側の負担となります。
また、ガイドラインではクロス張り替え工事については、工事の対象とする部分を平方メートル単位で定め、
請求する費用も平方メートルあたりのものとして定めるのが望ましいとされています。
施工業者の多くはこれにならい、クロス張り替え工事の料金をメートル単位あるいは平米単位で設定しています。
しかし、明確に平米単位で工事を行う部分を定めてその通りに実施する場合、
完成時に工事を行った部分と残した部分とでクロスの色合いが微妙に異なる可能性があります。
工事前のクロスの状態によっては一面全部張り替えるのが最適と判断され、借主が一面分のクロス張り替え費用を全額負担しなければならないこともあります。